2003年7月12日から8月24日まで、府中市美術館にて「公開制作」を開催しました。大勢のお客様にご来館いただき、作品制作の現場をご覧いただきました。私にとりましてもたいへん貴重な経験となりました。誠にありがとうございました。
今回の公開制作では、150号の大作を2点、30号の「キミドリの部屋」などを描きました。今回仕上げた150号の「キミドリの部屋」は、シリーズとして、17作目となる作品です。この作品では、三つの重なり合う部屋を描きました。空間を認識したかと思うと平面に戻ってしまうような空間、黄緑色の部屋に入ったかと思うと、ただの黄緑色のキャンバスになってしまうような、実体のない空間を重なり合う三つの部屋を描くことによって表現しています。また今回、150号の大作をもう一点制作しました。「ウサギねずみとの対話」という作品です。ウサギねずみは、私がつくった架空の動物です。ウサギは、おとなしく、かわいらしい生き物ですが、臆病で無表情な少し冷たさも感じる動物です。一方、ねずみは、たくましい繁殖力があり、好奇心が旺盛で、活発な生き物です。このウサギとねずみの姿態と気質を併せ持つウサギねずみは、創造の世界にいる私自身の自画像なのです。創造の世界にいるとき、つまり制作しているときの自分は、私自身ですが、私自身ではなく、もっと尊いものの力で描く何者かであり、ウサギねずみという架空の動物に自己を投影することによって、その感覚を表現しています。今回は、創造の世界での無限の可能性について、自ら自己に問いかける存在として、真正面を向いた巨大なウサギねずみの立像を描きました。 |